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粘弾性の基礎知識

もし、バスケットボールの表面がガラスの様にツルツルだったり、スライムの様にベトベトだったらパスやシュートができません。
もし、ボールが石の様にガチガチに固かっり、スポンジの様にフニャフニャだったら、ドリブルもできません。
表面は「滑らないけど、くっつかない」、硬さは「戻ってくるけど、潰れない」このバランスが大事なのです。では、この「バランス」は決める一番の方法は?それが「粘弾性測定」です。この粘弾性について少しご説明しましょう。


粘弾性とは?

粘弾性とは「粘性」と「弾性」を合わせた言葉です。

「粘弾性」と聞かれおぼろげながら理解できる方から、粘弾性屋を自称する物性評価のエキスパートまで、この言葉の理解は様々だと思います。ここでは「粘弾性」の概念を簡単に紹介します。
まず最初に「粘弾性」をごく簡単に説明すると、「粘性」と「弾性」をあわせ持った性質ということになります。
では始めに「粘性」と「弾性」からご説明しましょう。




粘性とは?

非常に大雑把な言い方をすれば、「粘り具合」が粘性です。基本的に液体に見られる性質です。
ハチミツをテーブルにこぼしたとします。ハチミツの広がるスピードは水の様には速くありません。ハチミツの「粘り具合」が抵抗になり、ゆっくりと変形していきます。
イメージで言えば粘性の高いもの程「粘りっぽく」、低いものほど「さらさら」しています。



弾性とは?

簡単に表現すれば、弾性は「戻ろうとする性質」です。基本的に固体に見られる性質です。
例えば金属のスプリングに上下から力を加え、変形させたとします。しかしスプリングに加えられている力を除くと元の形状に戻ります。これは、変形に与えられたエネルギーが、元の状態に戻ろうとするエネルギーになるからです。
もし、100%の弾性体というものがあれば、加えた力を抜くと瞬時に物質は元の形状に戻ります。






「粘性」+「弾性」=「粘弾性」

つまり液体の流れる性質「粘性」と、固体の変形する性質「弾性」を合わせ持つ性質が「粘弾性」という事になります。
この一見関連性のない様に見える性質ですが、実は私たちの身のまわりにあるものはほとんどが「粘弾性」の性質を持ち合わせています。例えば様々なゴム製品が良い例です。衝撃のエネルギーを流す「粘性」と、元に戻ろうとするエネルギーに変える「弾性」の性質をその製品・用途にあったバランスで利用しています。また、金属・プラスチック・樹脂・フィルムなど他の様々な素材の「粘弾性」も私たちの生活の中で利用されています。

測定でわかることは?

粘弾性の測定は実際どの様に役立つのでしょうか?

周期的な力や変形を与える「動的粘弾性」測定では、測定対象のサンプルや製品は与えられた力(変位)に対し反応します。100%弾性体の場合で、与えた力に対しサンプルは瞬時に反応します。
それに対し粘性体の場合、サンプルは遅れて反応します。この遅れの度合いを正確に捉えることで、サンプルが持つ弾性成分と粘性成分を解明することができます。また、与えた力や変位に対するサンプルの応答の大きさにより弾性率が求められます。

衝撃を吸収させる製品を考えます。この製品には外から与えた力を吸収し、その力を減衰させることが求められます。製品が100%弾性体であれば与えた力をそっくり返しますので、衝撃を吸収しません。また、100%粘性体では与えた力で製品が変形した場合、元の形状には戻ることがありません。
ここで「粘弾性」の登場です。粘性成分が大きくなるほど与えられるエネルギー(衝撃)の吸収性能が高くなります。どの程度与えられたエネルギーを吸収させ、なおかつ求められる強度(弾性率などで評価)に適した材料を選択するには「動的粘弾性」の測定が必要となります。

また、この応答性の遅れや弾性率で代表される粘弾性のパラメーターは「温度」・「力や変形の速度」・「力や変形の大きさ」が変われば大きく異なります。つまり、使用される製品の環境に合わせた条件で粘弾性の測定を行う必要があります。

評価される製品の例

身の回りにある、様々な製品で粘弾性測定の評価がなされてます。

◎タイヤ:車重の支持性能・グリップ性能・振動の吸収などの評価。
◎免震・制振材料::建造物や橋梁に使用される免震・制振製品の評価。
◎乗用車シート:乗り心地や振動吸収性能の評価。
◎吸音材:コンサートホールの吸音材・車内の遮音性評価。
◎電線:熱による劣化の評価。
◎フイルム:様々な用途のフイルムではその延伸性能や減衰効果
◎建造用材料:長期間における変形挙動の評価。
その他「炭素繊維強化樹脂」や「セラミック」「金属材料」「ガラス」など様々な材料の物性評価に使用されています。